簡単に言えばマウスピースの中に唇が入り込んで内側の粘膜部分でも吹いてしまうのでそう呼ぶらしい。
トロンボーンやユーフォニアム、テューバでも必要以上に押し付けて吹いてしまうと、バテやすい、ピッチコントロールが出来ない、音が痩せる、という事になる。
演奏時のアンブシュアはブレスコントロールと不可分な関係にあるのだが、頭では理解しているつもりでも自分の耳では気付かない事が多く、ブランクがあったり、練習不足で徐々に調子が落ちると「楽器を吹くための呼吸法」を体が忘れてしまうので、楽器が鳴らない原因をマウスピースや楽器、遂にはトシのせいにしたがるから我ながら困ったものだ。

知る人ぞ知る「マジオリップス」。画像を検索すると自分の記事にヒットした(笑)
このように突き出したアンブシュアは誤解を招きそうだ。
「粘膜奏法」という呼び方を最初に用いたのがトランペット奏者の藤井完氏とされているようで、ご本人のHPを読み進んでいるうちに止まらなくなったので、全てコピーして印刷し、著書をヤマハに注文した。

「朝練 管楽器の呼吸法」(税込1,050円 全音楽譜出版社)
かなり噛み砕いて書かれてはいるものの、解剖学的なイラストが見づらかったり、少ない頁数に無理やり押し込んでしまった感があり、確かに読みづらい。
初版が1999年。版を重ねて現在第16刷。
「下っ腹を膨らませる」いわゆる「腹式呼吸」が未だにまかり通っている中での出版は、当時としてもかなり議論を呼んだものと推察されるが、とにかくこうした書物が世に出るという事が「快挙」だったのだと思う。
買った日に、横になって読みながら「ベルカント・モード」の呼吸法を試していた。
喉を開けて呼吸すると本物のあくびを誘発する。
そうこうしているうちに不覚にも寝てしまったではないか!
呼吸法にしろアンブシュアにしろ、文章で伝えるのは難しい。
願いは・・・歌うように吹いてみたい。
藤井氏ご本人のHPの「こぼれ話」と、同じくトランペット奏者である小原裕樹氏の「これまでの話」は、この本の理解を深めるのに欠かせない事例が多く見られ、格好の「サブテキスト」でもあるので、併せて読む事をお勧めしたい。