1991年、「ガブリエルのラッパ」が小樽のリゾートホテルのCMに使われていて、タウン誌で紹介されていたのを見て購入した記憶がある。
数年前の断舎利で残すかどうか迷って手放した1枚だったが、記憶の澱からヒョイと出て来た驚きと懐かしさも手伝い、中古を購入した。

札幌でライヴ活動を行うグループのメンバーらが集まって結成された3人組で、ギター・ハンマーダルシマー・ヴォーカルという編成。
当時は毎日のように聴いていた。
生演奏に接したくなり、「ステージガイド」を見てもグループ名が見当たらないので編集部に問い合わせたところ、CDの発売をもって解散したとの事。
メンバーの1人(ハンマーダルシマー奏者)がお店をやっているという話を聞いて訪ねた事がある。
店の名前は忘れたが、旧石狩街道沿いの喫茶店で、色々な民族楽器が置かれていた。
「とにかく終わった事だし、この先3人で活動する事はない」と、穏やかな口調ながら断定的に言われたのが印象的だった。
事情を知らぬ「にわかファン」が自分の他にも少なからず訪れたのだろうと察する。
シュールで諸行無常感が漂う詩の内容はどちらかというとネガティヴな印象を与えがちだが、無色で伸びやかな女性ヴォーカルが上手く包み込んでくれている感がある。
後入れのオーケストラアレンジも手間がかかっていて贅沢だ。
敢えてベストトラックを挙げるとしたら「夢の途中」。
曲の独創性とオケアレンジの巧みさ、特にヴォーカルのコントロールが際立つ佳曲だと自分は思う。
この年になって改めて聴くと、3人によるシンプルな演奏のほうがしっくり来る。
手前味噌になるが、修理したBOSE AW-1で聴くと3人で一発録りしたルーテルホールの空気感まで伝わってきて鳥肌が立った。
1991年は転職した年で、当時の事が色々と思い出されて懐かしい。
楽曲の記憶は細部まで鮮明なのに、あれから28年も経過している事に驚かされる。
ヴォーカル女性はかなり早い時期に人前で歌う事をやめてしまったようで、90年代中頃に別のリゾートホテルのCMソングで歌声を聴いたのが最後。
あれから28年経ち、「未だに画像無し」という心残り感のもこのアルバムの価値を高めているのではないかと思う。
01.南冥行
02.蘭の舟
03.ケシの花
04.ナーダムがやってきた
05.馬車夫の恋
06.お姫さま
07.ふらり
08.春来ませり
09.ガブリエルのラッパ
10.チベット・ワルツ
11.夢の秘密
12.雲南の風
13.基隆で
14.さくらさくら
15.トラジ
16.わ~い
※ 1991年の発売当初は1~3、5~8がメドレーで全11曲。
2016年3月の再発時にトラック分けされて全16曲となった。