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谷口静司さんの事

愛読していた甘口時評がしばらく滞っていたので心配していた矢先、23日に亡くなったとの記事が最後の更新となってしまった。(新聞での公表は27日)

初めてお目に掛かったのは1985年、フルトヴェングラーのリマスターCD全集が発売された年で、クラシック愛好家でオーディオマニアの友人に誘われて、〔さっぽろAVシアター〕に参加した時の事。
ちなみに、同じゼミ生だったその友人とは現在も交友が続いている。

フルトヴェングラー指揮による貴重なカラー映像(ドン・ジョバンニのワンシーンだったか?)や、擬似ステレオとリマスターCDの聴き比べなど、当時札響主幹であった谷口氏が適切な解説を加えながら進行し、終盤には当時存命だったカラヤンの音楽観の変貌にも触れるなど、実に見応え・聴き応えのある企画だった。

タートルネックのセーターにジャケットという出で立ちで、音響機器のセットを終えて席に戻る際、左手で支えた右腕の先を顎に添えて歩くサマが何ともカッコ良かった。
その後、FM北海道のクラシック番組は毎週欠かさず聴いていて、クラシツク評論家としても一番身近な存在だったように思う。

2000年、在札コミュニティFM局の開局に伴い、谷口さんが番組を担当する事になった。
谷口さんの〔音楽案内〕は土曜日の17時から2時間(録音)、そして21時からが私の3時間生放送で、尊敬する谷口さんと同じタイムタイムテーブルに載るという夢のようなプログラム。
クラシックからオールディーズへの番組の流れが素晴らしいという多くのリスナーからの賛辞は、当然ながら100%谷口さんのお陰。

実際の会話は番組でのボソボソしたものではなく快活そのもの。
ユーモアとウィットに富んだ話しぶりは魅力的で、ペースメーカーを埋込んでいるとは思えないほど健康そうに見えたものだ。
やがて局の経営悪化に伴い、谷口さんの番組は他局に移った。

もう時効だから書くが、シューリヒト指揮のブルックナー9番をリクエストし、それがオンエアされた事がある。
どうした事かリクエスト主を〔例の友人〕と勘違いされたようで、早速本人にお礼を述べたそうである。
覚えがないので否定したら憮然とした表情をされていたと、後から聞かされた。
内輪の仕込みはマズいので全く関係ない名前を用いたのに何故そうなったのか、未だに見当が付かない。

享年83歳。
半世紀以上の永きに亘り、北海道のクラシック界を牽引し続けた。
私の事など名前はおろか顔すら記憶されていなかっただろうが、多くの事を教えていただいた。

合掌。
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2014年07月27日 | Comments(0) | Trackback(0) | 音楽
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