
シューリヒトがEMIに遺したベートーヴェン(全曲)とブルックナー(3・8・9番)。
タイトルだけを見るとEMIレーベルでの全録音と思ってしまうが、モーツァルトも録音しているので紛らわしい。

それを知った上でコレを見ると一応は納得できる。
さて、この9枚組はつい先日まで送料込み2,000円程度だったのが急に値上がりした。
といっても2,499円なのだが、在庫が払底すると悔しい思いをするので早速注文。
先ずはベートーヴェンの全集から。
収録時期は57~58年で、ステレオは何故か〔第9〕のみ。
大手レーベルは55年に足並みを揃えてステレオ録音を開始したものと信じ込んでいたのであった。
ウィキペディアから抜粋すると、EMIは55年2月4日にロンドンのキングス・ウェイ・ホールにて正規のステレオ録音を開始。1958年10月にステレオLPの発売を開始、とある。
唯一のステレオである〔第9〕にしても、後述する60年代のブルックナーと較べるとこれが同じレコード会社の音か?と疑う程の違いなので、60年までの2~3年内に録音機材が一新されたのだと思う。
聴きているうちにステレオだのモノラルだといった事などはどうでも良くなる。
古くとも豊穣な響きは当時の技術の粋、何ともいえぬ味わいがある。
基本早めのテンポの中で緩急自在なシューリヒトの采配と、抜群のアンサンブルを誇るパリ音楽院管弦楽団との取り合わせは絶妙で、その響きは何と瑞々しいことよ。
どの曲を聴いても生きる喜びに満ち溢れているようだ。
4日間の早起き+通勤で一気に全曲聴き通してしまった。
本場ドイツではなく洒脱さを感じさせるフランスのオケと組んでいるというのも面白い。
金管ソロの〔ちり緬ヴィヴラート〕も昔の仏オケならではの〔趣〕と言える。
まだ一度しか聴いていないが、〔第9〕の推進力とスケール感は感動的だ。
音楽室に貼られている肖像画の〔しかめっ面〕を鵜呑みにしてはイケナイ。
さて、次はブルックナー。
EMI録音の8・9番は昔から決定盤の誉が高く、ここでの説明は不要だろう。
まだ持っていない方はこのボックスを買えば凄く得をするのは間違いない。
今回のリリースに先立ち、2012年にリマスターがなされたようだが、8・9番については90年代に発売された物との違いが(私の耳では)解らなかった。
3番は1965年の録音なのにモヤの中で聴いているようなボケた音で、すんなりと曲に入れないもどかしさがある。
どのように改善されているか密かに楽しみにしていたのに、音圧が上がっただけ。
高価なものも色々出ているが、マスターテープ自体がそうなら仕方がない。
この曲はベームかクナで我慢しよう。
※ 3月25日追記。
Medici MastersのCDでハイドンの交響曲第86番とのカップリング。
送料込905円の中古にて購入。

鮮明さは8・9番には及ばないが、引っ込んだ感じがかなり改善されている。
ハイドンの86番(1954年シュトゥットガルト放送響)も、Hanssler Classicから出された20枚組に収録されていた同一音源よりも格段に音質がいい。
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