
この曲は作曲者のグレインジャー自身のルーツであるイギリスの民謡を題材にしており、アメリカのバンドのために書いた委嘱作品。
初演が1937年。既にアメリカ移住から20数年経っており、木管奏者として一時期軍楽隊に在籍していたという履歴性から見ても、Baritoneパートで使われる楽器は当時のCONNやKINGといったアメリカ製の音色が念頭にあったものと推察している。
30年前に全曲演奏した時はB&Hのバリトンを吹いた。
もっと張りのある音で吹きたいと思ったものだ。
特に4・5楽章のソロパートの音色は、作曲者の持ち味である豊饒な色彩感が活かされていないように思われる。
同じユーフォニアムでもイギリスとアメリカとではコルネットとトランペットぐらいの音色の違いがある。
イーストマンの1958年録音では既にBessonに置き替えられていたようで、それ以前のアメリカの楽器を用いた古い録音は残されていないのではないだろうか?
そんな事情もあって今やイギリスのユーフォとバリトンで演奏されるのが当然としても、イギリスの曲だからブリティッシュスタイルだと勘違いされているような向きもあるようだ。
ユーフォ吹きとしては気になるところ。

今回はCONNの楽器で吹いてみようと思う。
自画自賛かもしれないが、やはりこの曲にはこの音色が合う。
TPソロの後にTuttiで主題が一気に盛り上がる部分のブラッシーな響きは格別。
アメリカ製バリトンホーンの存在すら知らないユーフォ吹きが増え、コレクターズアイテムとなってしまった感があるものの、自分が吹けるうちはこの楽器の特質を生かせる曲を演奏する機会を待ちたい。